今回のチャリティー企画展の売上の寄付先として、Global Coralitionを選定した。彼らは科学者とアーティストからなる海洋生態系の再生を目的としている団体だ。2017年にアンジェリン・チェンとカイル・ブロックによって設立。現在は、ハワイ大学の研究所との協力により、すべての海洋生物の25%と全世界の推定10億人の生活を支えるのに不可欠であるとされるサンゴ礁の再生*1、特に、いかにサンゴを効率的に陸上・海洋養殖するか、海洋生態系を壊さずに環境に適応したサンゴを育てる研究を中心に行なっている。2020年から2022年の間には、マイクロフラグメンテーション(サンゴを切り取って成長速度を25~50倍速に加速させるプロセス)の検証を実施。成長速度の加速に成功し、現在の海洋環境に適応した強靭で多種なサンゴを大規模に成長させることを可能にし、この陸上型サンゴ養殖場の建設準備を進めている段階だ。
Global Coralitionの取り組みについて特筆すべきは、このような科学的研究の取り組みのみでなく、アートや教育などの幅広い視点からサンゴの再生プロジェクトに取り組んでいることである。GCはサンゴ再生のプロセスの効率化や養殖場の建設を進めるに止まらない。地域の文化人の指導のもと、アーティストと地域住民の協業によって地域文化を反映したアート作品制作。研究調査によって、環境負荷が少ないサンゴ再生素材である中性セメント(pH Neutral Cement)を用いた素材を活用している。実際に作品を海底に設置し、サンゴの再生による生態系の維持に貢献するとともに、エコツーリズムや教育プログラムを通して人々の意識を高め、地域コミュニティーへの参加を促す活動を精力的に実施している。
例として、ドミニカ共和国で、珊瑚礁の既に90%の珊瑚が失われてしまったソスア湾でプロジェクトを実施。アーティスト協力のもと、現地の先住民文アラワク族/タイノ族の「水の母」と呼ばれるアタベイをモデルとした約4.6メートル(15ft)の彫刻を珊瑚再生素材で作成。4ヶ月後にはサンゴ礁の石灰化やセメント化(海水との化学反応によりサンゴの骨格が形成される現象のこと)が見られ、実際に生態系が戻ってくるのが観察された。また、地元の修復グループEco Koh Taoが、この場をダイビングスポット、教育、修復の場として続け、地元地域の活性化にも貢献し続けている。また、作品の周りに36のピラミッドを設置。5000個のサンゴの移植を行い、表面には現在20種類以上の生物が生息している。今後は、ドミニカ共和国のNGO・マグア財団と協力し、当該国北部海岸で初の陸上サンゴ養殖を開始する予定。今回のArtXとRVCAの協力で開催されたチャリティ展示”Dwellers”の売上の20%はこのサンゴ養殖プロジェクトへ寄付された。
Global Coralitionのプロジェクトには、本企画展に出展しているエスコット・リードが建設エンジニアとして参加していたのがきっかけで繋がった縁である。Global Coralitionの一つの社会環境問題に対する分野横断的かつ多様なアプローチは、ArtXのアートを通した社会問題へのアプローチと通づるところがあった。また、本展示会”Dwellers”のメインテーマとなっている”人と自然のつながり”は彼らのアートを通して分野横断的に行なっている活動とビジョンを共にしているので本展のチャリティー協力先として声を掛けさせていただいた。
このようにして、いざさまざまな活動団体を調べてみるとビジョンを共にする人々は多くいることがわかる。想像よりも多くの人々が、自然と私たち人間の本来のつながりの大切さを訴え、環境を共存できる未来を模索している。そのような中で、今回”Dwellers”という展示でArtXとGrobal Coralitionがつながったように、広い視野で分野横断的に活動していくことでそれぞれのビジョンは国や文化を越える。そうしてさまざまな点と点が線でつながり、小さなキッカケではじまった環境へのアクションは、全体として大きなポジティブな変化の流れになりうるはずだ。