From Trace to Image表面には、作り手が素材へと触れた確かな痕跡が留まります。
それは土を捏ね、木を削り、漆を塗る過程で刻まれた、「途中の時間」そのものです。それぞれの痕跡は、作品ごとに豊かなグラデーションを描きます。
削り出された素材の肌ざわりがそのまま立ち現れるもの。
素地の上に軽やかな一本の線が引き直されるもの。
刻み込まれた無数の跡が、幾何学的な文様へと変容するもの。
あるいは、素材の気配を背景に、大胆な色面や絵柄が浮かび上がるもの。
土や木そのものの手触り、色や形、そしてひとつの「像」へ、素材と手が紡ぎ出す、ひとつづきの道筋を辿ります。
沈黙の地層絵肌は、時間そのものの厚みを纏います。
深い藍の闇が静かに揺らぎながら凝縮する夜の気配、上下を分かつ水平な直線と風化したコンクリートのような質感が刻む沈黙、淡い紫と緑ののあいだで息をひそめる気配、橙から紫へと移ろい、そして、雲から覗く明るい青がどこまでも柔らかく広がっていく静けさ。
出来事そのものではなく、出来事が過ぎ去ったあとに積もる時間の質感が、そこにはあります。滲み、溶け、斑になり、沈んでいく色、それぞれの作品が沈黙を抱いています。しばらく目を留めることで、はじめて私たちはその地層に触れることができるのかもしれません。