ArtXはArtReviewと共同で、一夜限りの展覧会「Sensescape」を11/5に中目黒hvenにて開催しました。本展覧会では、國本怜と角田美和による没入型のサウンドインスタレーションと彫刻作品を通じて、沈黙、間、不在といったテーマが探求され、それぞれが「感覚」に向き合うことができる空間作りがされました。味覚からより体験を豊かにするため、東京を拠点とするフランス人シェフ、トーマス・キムによる地中海と日本から着想された料理が提供されました。
静寂や不在にこそ、繊細な感覚や豊かな想像力が宿るという考えのもと、「Sensescape」では鑑賞者が実際に体験を通して感じることができるキュレーションがされました。
没入的な空間のメインピースとして、元々クラブスペースである会場のブラックルームには國本の[KAZE #2-hūm]が展示されました。一辺2400mmの立方体の構造体と、そこに吊り下げられた567枚の鉄製のプレートが音を響かせ、風が通る際にプレートで形作られた蓮華が響きます。その音により時間と空間、意識と無意識といったさまざまな境界を越え、古来より人々が抱いてきた自然と人間の関係性や時間の非線形性を問いかけます。
また、中空のアクリル球体内に LEDと蠕動ポンプを用いて水滴音と波紋を創出するSHIZUKUでは、騒音に包まれた現代社会において静寂を再認識させます。水を張った球体の内部に水滴が落ち、LEDによって照らされた波紋が床と球体の表面に浮かび上がり、美しい水滴音が響きわたります。
一方、角田美和の作品は、箒という日常的な道具の不在を通じて、存在と不在の境界線を曖昧にし、内と外、そしてその間に「静けさ」を生み出しました。そこには、居場所の喪失や帰属意識の揺らぎが投影され、鑑賞者に内省的な印象を与えます。かつては儀式、清潔さ、家庭生活の象徴であった箒の不在を探求することで、作品を通して私たちにアイデンティティや帰属意識 、その文化的な相互関係を思い起こさせます。
また、当日のプログラムとして、ArtReview編集長のMark Rappoltをお迎えし國本怜とのトークセッションを開催しました。
[KAZE #2-hūm]の幻想的な音に包まれた空間で二人の対話は行われ、國本の作品の持つ象徴性、沈黙と不在の相互作用、そして制作プロセスについて意見を交わしました。その中で、國本はKAZE #2-hūmは、仏教のマントラにインスパイアされており、生命の息吹と風の概念を象徴する、異なる開花状態にある一対の蓮の花を特徴としていると説明しました。宇宙を構成する仏教の五元素 - 地、水、火、風、空 - が、インスタレーションに吊るされた各プレートに刻まれています。
國本はまた、伝統的な芸術と現代技術を融合させるアプローチについても語りました。彼は、テクノロジーを鉛筆や筆のように考えており、自然との人間の相互作用のエネルギーを表現するために使用できるツールとみなしています。感覚的な体験を中心に据えた彼の作品は、さまざまなシンボルとテクノロジーを統合して、静謐な雰囲気を作り出します。
今回のRappoltとの対話は、國本の制作について紐解く機会となりました。
ArtXの活動は、「オークション」、「マガジン」、「プログラム」の3つの主要な柱を中心に構成されており、時代や文化を越えて個人の感性を通じて普遍的な価値を発見することを目指しています。プログラムを通じて、新しいコレクターを育成、新進アーティストの支援を行っています。また、アートと社会のつながりのもと展覧会などを通じて環境保護団体と協力しており、初回オークション「The Perennial Curation」の収益の一部は沖縄の珊瑚礁保護活動へと寄付され、その活動は現地で実際に実を結び始めています。
今回の一夜限りの展覧会「Sensescape」もプログラムの一つであり、コレクター、アーティスト、キュレーターなど、ArtXの横断的な活動を反映するようにさまざまな方にお越しいただきました。
Artists
國本怜
1991年NY生まれ、東京育ちのアーティスト。2017年からNY、2021年から東京で活動中で、慶應義塾大学美学美術史専 攻を卒業。独自の立体音響システムを使い、参加者の振る舞いと空間を結びつけるインスタレーションを制作。伝統的な日本の美意識と現代テクノロジーを融合し、「静寂」をテーマにした作品を発表している。
角田美和
幼少期をNYで過ごし、大学でテキスタイルを学んだ後、渡英しRoyal College of Artでジュエリー&メタルの修士号を取得 。現在ロンドンを拠点に、有機的な素材を用いたインスタレーション作品、彫刻、実験的なジュエリーを制作している。作品 を通して、存在と不在、見えるものと見えないものを行き来し、私たちの人間の経験の美しさや複雑さを探求している。「間(ま)」という日本の概念にインスピレーションを得て、角田は存在と非存在を往還し、私たちの認識を揺さぶります。