アートフェアとは、ギャラリー、コレクターが世界中から集まり作品を展示販売する催しである。その中でも、特に世界最大級のアートフェアとされるArtBaselは”アートフェア”の枠に収まらない。バーゼルという都市自体が現代アートの"メッカ"になり、ギャラリスト、コレクター、キュレーターなどアートに携わる様々な人々がスイスの一都市バーゼルに集まる。この権威あるイベントの歴史は古く、1970年にスイスのバーゼルで始まり、マイアミ・ビーチ、香港、そしてパリと開催地を広げている。その土地の文化やトレンドを反映した形で展開されるプログラムによって、開催地ごとの切り口で現代アートシーン牽引していると言える。
1970年より始まり、今もなおコレクターやギャラリーにとって最も重要なアートフェアと言われるArtBasel、幾多あるアートフェアの中でなぜそこまで重要なのか、
ひとつのマーケットを越えた規模感

ArtBaselは、アートの売買だけが目的ではなく、教育、対話、発見の場でもある。このフェアでは、アーティストの創作プロセスを深く掘り下げるトークセッションやパネルディスカッションが開かれており、さらに、開催都市の多くのギャラリーや美術館が、フェアに合わせてサテライトイベントを開催している。これにより、アートフェアの枠を超えた都市全体としての活気ある雰囲気が生まれている。インスタレーション作品などが街中に散りばめられ、パフォーマンス、サテライトフェアなども開催されており、ArtBaselを震源地としてアートイベントが同時多発的に展開されている。
"Parcours"と名付けられたセクターでは、ArtBaselのプログラムの一部としてサイトスペシフィックなインスタレーション、彫刻作品、パフォーマンスなどがバーゼル市内の公共スペースや歴史的建造物にて展開されている。街中にうまく紛れ込んでいるので、参加者は地図とサインを手がかりに作品を探すことになる。実際に街を歩きながらアートを楽しむ、それもまたこのプログラムの魅力の一つだ。
常に新たな才能が発掘される場
ArtBaselは、世界のアート市場の形成に重要な役割を果たしている。それぞれのギャラリーがその時の一押しのアーティストをプレゼンするため、コレクターやキュレーターが新たな才能を発掘する場として機能し、現代アートの中で新たな潮流を生み出し続けている。また、集まるのはコレクターやギャラリー、アートディーラーといったマーケットの構成員のみだけでない。美術館のキュレーターや芸術祭の関係者などコマーシャルとは違った層も集まるため、そこで見つけられるトレンドや新たな才能は”マーケット”の枠にとどまらず広く活躍していく。
Reinhard Mucha "Island of the Blessed"
Unlimitedというセクターでは、このような大規模なインスタレーション作品を展示している。他のアートフェアにおいてもインスタレーションの展示はあるが、ここまでの規模感で扱っているのはこのフェアの特徴の一つだ。そして、規模やプライス感からは信じ難いが、これらの作品は全て販売しており、美術館やプライベートコレクターが作品を購入している。
新たなつながり、取り組みを産む場として
単にアートを売り買いするだけではなく、アーティスト、ギャラリー、コレクターのつながりを育んでいるのもこのフェアの特徴だ。世界中から人が集まるそのエネルギーと、そこで生まれる活発な交流により、アート界のカレンダーの中で最も重要なイベントの一つとなっている。また、さらにもう一つ特徴的なのがコレクター向けに組まれたVIPプログラムである。フェアの期間中、アーティストのスタジオ訪問、美術館のツアー、カクテルアワーなど、フェアの協賛企業とも協力しコレクターへ向けて多様なプログラムが用意されており、その数は一度の参加では全て周り切るのは不可能な程だ。これらのプログラムにより、”マーケット”という枠を越えて、魅力的な文化イベント(フェア)として展開され、コレクターはよりアートとより親密な時間を過ごすことができる。
コレクター向けのVIPプログラムでの、Novartis Campusでのキュレーターによるツアー。製薬会社であるNovartis Campus内の建築、アート作品について担当キュレーターによる解説などがあった。少人数で行われるので、コレクター同士の交流も生まれやすく気楽に参加できるのが特徴だ。
ArtBaselには、コレクターに加えていわゆるアートの業界人や専門家たちが多く集まるため、その街全体を巻き込む規模感とは裏腹に、なかなか一般の方には敷居が高いアートフェアと言えるかもしれない。ただ、一度敷居を跨いでしまえばフェアを中心として展開される多様なプログラムにアクセスすることが出来るとともに、同じくアートが好きな人々とのつながりが生まれるはずだ。ぜひアートフェアというものを一年のカレンダーに組み込んでみてはどうか、アート好きとの新たな繋がりが生まれ、年々楽しみなイベントになっていくはずだ。