どんなに物理的に離れていても、自然について私たち人間が抱く憧憬のような気持ち - 本展覧会では感覚的、没入的なキュレーションにより、都市に生きる私たちが本能的に備えるそのような欲求や憧れにアプローチした。アーティストの世界観で満たされたRVCAの空間の中で、鑑賞者はきっと彼ら/彼女らのように、自身の中のDweller(ある住人)としての意識を見つめ直す時間になったはずだ。
渋谷に位置するRVCA Shibuya Galleryにて、新進気鋭のアーティストを支援するチャリティー展示” Dwellers”が開催された。今回、RVCAによるRVCA Shibuya gallery の新進アーティストへのプラットフォーム提供により実現した展覧会である。RVCAは、様々なアーティスト関わることで命を吹き込まれた衣服やアクセサリーなどを継承していく国際的に活動するライフスタイルブランドだ。そして、RVCAの設立当初からの目的は、アートや音楽、そしてファッションを含むライフスタイルをRVCAならではの方法で融合させるプラットフォームを創り上げることであった。現在、このビジョンの最前線にRVCAのArtist Network Programがあり、気鋭のアーティストを紹介することで世代間やアーティストの間でのインスピレーション促すプロジェクトだ。
本展Dwellersは、国内外の若手アーティストに作品や活動を紹介する機会を提供すると同時に、地球の生態系における差し迫った問題にスポットを当てることを目的とした、チャリティー展示プロジェクトとしてArtXとRVCAの協力のもと開催された。本展でのGlobal Coralitionへのチャリティ支援を通して、環境を守るための活動を支援することを目的としており、展示の収益の20%は珊瑚礁保護に貢献するためGlobal Coralitionへの寄付が行われた。本展は、環境保護団体へのチャリティ展示ということで、それぞれのアーティストが自然と人間の関わりにつ いての作品を発表した。
また本展覧会は、三部構成で開催された。一部と二部では、作品展示と同時にギャラリー空間をライブスタジオとしても使うことで、来場者は作家の制作プロセスも同時に見ることができ、より親密な鑑賞体験となった。三部では、他のアーティストも参加した第三部での展示では、サウンドスケーププロデューサーであるRobin Rastenbergerのサウンドワークやパフォーマンスもあり、より調和した世界観の没入的な展示となった。
本展では、7人のアーティストが参加。それぞれのアーティストが、現代社会の取り巻く環境の中、どのように自然と関わりを持っているのかに焦点を当てた展示となっている。
本記事 vol.1では、そんな本展に協力いただいたアーティスト達、Dwellers ( 住人たち) を紹介する。
展示作家の1人として、ライフスタイルブランドであるRVCAが実施する有名・無名問わずアーティストを支援するプログラム、RVCA Artist Network Program より[リッキー・リー・ゴードン](https://www.rickyleegordon.com/home)が参加。南アフリカ、ヨハネスブルグ生まれのリッキーは自然を自然界にしか存在しないもので描くこと(“Painting nature with nature”)をモットーに、さまざまな媒体を探求するアーティスト。植物染料、蜜蝋、青写真、リトグラフ、銅や酸による彫刻、木彫、真鍮鋳造を通して素材の魅力を引き出し、自然を表現し続けている。また、アムネスティ・インターナショナル、グリーンピース、国連などの組織から依頼を受け、社会問題や環境問題に焦点当てた大規模な壁画等のアート作品を制作し、ナショナル・ジオグラフィックによる「ストリートアート界の11人の巨匠」の一人としても知られている。また、リッキー自身、アーティストとして活動するとともに、キュレーターとしても活躍。また、スリランカとインドネシアのバリ島に設立したシューニャアーティストレジデンス(Śūnyatā Artist Residency)を運営し、自身の制作活動を行うとともにアーティスト支援も行なっている。
本展においても、彼が常にインスピレーションを受けている海を題材にした作品を展示。彼が、海を描くことに引かれる理由として、Xerexes Cook(ライター・エディター)による[インタビュー](https://www.rickyleegordon.com/interview)では、「COVID-19のパンデミック中、毎日のように朝晩サーフィンしていた波を眺めていると、海は彼のミューズであり、先生なのだということがよくわかる。海には波動があり、私の絵にも私の意図が吹き込まれ、創作の瞬間に至極の安らぎを感じ、没頭することができる」と述べている。本展で展示されたリッキーの作品も穏やかながらも荘厳な海を湛えていた。
ここからは、リッキー・リー・ゴードンの他にArtXのサポートのもと参加した6名のアーティストを紹介する。
[山田裕基](https://www.instagram.com/yama.da.yuki/)は”命の強さ”をテーマにアート活動を続けているアーティスト。 現在は神奈川県葉山を拠点に、海が一望できる丘にアトリエを構え、一日一枚、自画像を描き重ねる「重我像(じゅうがぞう)」をはじめとする作品制作を行なっている。また、アートディレクターとしも活動しており、京都で行われたアートフェスティバル等を主催している。
本展では、作家の自宅の窓から見える夕日や海の様子を描いた絵日記的作品、彼の旅し生活した波照間島などの島々で生活した際に制作された作品を発表した。今回の作品は、作家の都会から離れた葉山や島々の自然の中で、いかに自分自身の感じたこと、気持ちに素直になるか、それを受け止めることができるかを”自然に”問いかけられるような作品であった。また、作品は優しさや穏やかさだけでなく、どこか悲しみや寂しさのような情緒を帯びており、その素直なタッチからどのような感情でも自分自身を受け入れる愛とその懐の深さが感じられた。会期中には多くの鑑賞者が作品の前に立ち止まり、作家自身の海のように大きい心と太陽のように暖かく優しい人柄に引き込まれていた。
[キャサリン・ユリ・シャピロ](https://www.katherineshapiro.com/)は日本人とユダヤ系ウクライナ人の両親の間に東京で生まれ、独学で美術を学んだ。大学卒業後、世界中を放浪するノマド生活を送り、様々な生活様式を経験しながら、自分自身の探求と自身の作品制作に取り組む。現在はパートナーのエスコットと猫のニンブとともに、北ポルトガルの樫の木あふれるミーニョ渓谷を拠点にユルト(モンゴル語のゲル)での生活を通した制作活動を行なっている。
本展では、インド、タイ、ポルトガルでの生活を通した作品を展示。ライフスタイルの変化とともに自然環境と対話し、作品に落とし込み、作品から作家独自の世界観感じ取ることができる展示であった。期間中は、来日し、ほとんどの期間在廊。来場者と直接コミュニケーションを取ることによって彼女のライフスタイルと作品のメッセージを直に伝えた。また、来場者一人一人と深くコミュニケーションを取り、彼女の自身のライフスタイルの選択や彼女の感性について深く議論していた。彼女はライフスタイルは現代の利便性から外れているが、彼女の樫の幹のようにしっかりした芯と、自由なマインドは、常に来てくれた人を包み込んで安心感を与えてくれていた。
エスコット・リードは、機械工学と生態環境学の分野で活動するエンジニアであり、過去10年間に65カ国以上を旅し、アーティスト、写真家、スタートアップやデザインプロジェクトのコンサルタントとして国際的に活躍してきたアーティストでもある。現在は、ポルトガル北部の森にオーク材の居を構え、自作の非電化住宅に住みながら、エコロジー建築や再生アグロフォレストリーのプロジェクトに携わっている。
本展では、デジタル技術の発展した現代社会における人とのつながりを問いかける旅の手記、生態系の秩序やからインスピレーションを得た自然と都市の調和を図るエコロジカルな建築、循環的な森林農業システムの構築、木工仕事に関する彼の記録を展示した。彼の生き方そのものだけでなく、彼の紡ぐ言葉は、多くの来場者の心に訴えかけた。
*In our existential fear of unknown, how much wonder have we sacrifice in exchange for the warm of security of external explanation
- Escott Reed*
現代の情報社会のにおいてける無意識の怖れを気がつかせてくれる言葉であり、私たち現代人の多くに当てはまる言葉なのではないか。作家の分野横断的な活躍と自身のライフスタイルを表現媒体として捉えたものとなった今回の展示で、生き方そのものが表現方法となりうることを示してくれた。作家が今回示している通り、誰しもがその生き方で自身を表現できるということを前提に、ArtXとしてはエスコットのような作品も芸術の一つの表現方法(生き方)として認識し、今後ともサポートしていきたい。
小林直海は湘南の鎌倉市で海を身近に育つ。18歳でサーフィンのプロになりアマチュア時代から数々のコンテストで活躍していく中、現在は、彼の作品は、頭の中のイメージと実際に目の前にある被写体を組み合わせることで写真や映像作品を制作する新進写真家としても活動。日本や海外などで、被写体としてサーフィンの映像作品をメディアに掲載し上映会なども行っているマルチなアーティストだ。
本展では、サーファーコミュニティーのおける日常風景を組み合わせた写真作品のインスタレーションを発表。彼のライフスタイルのベースとなっているサーフィンを通して、またはサーファーのコミュニティを通して、海と触れ合う上で感じるバランス感覚をどのように写真を通して表現した。展示中は彼自身も在廊し、サーファーコミュニティーの人たちも度々彼の作品を見に立ち寄り、彼のアーティストとしての新たな一面を見せる機会となもなった。また、日常風景の写真をコラージュのように組み合わせた作品からは、作家の優れたバランス感覚が感じられた。その構成のどこか力の抜けているようでいても、画面全体としての主張は損なわない作品は、作家がサーフィンで培ったバランスなのかもしれない。展示中も、彼の穏やかな人柄からサーファーコミュニティに限らず多くの人々が彼の作品に集まった。
リコ・シュリ・モンマは東京を拠点に活動するニュージーランド出身の現代美術家。彼女は14歳で米国大学にエンロールしたのち、化学・物理・工学の研究を行なってきた学術的なバックグラウンドがある。フィジカルやメタフィジカルを論ずる様々な見解よりインスパイアされる彼女の作品は、科学や考古学を通し時代を超え、捉え続けられてきた自然の形態の研究でもある。彼女の作品制作は、自身を理解する手段でもあり、積み重なる考えや希望でもあり、気まぐれに浮かんでくる想像物でもある。また、彼女はArtX Auctionのディレクターでもあり、現代社会の抱える様々な問題をキュレーションを通して、アートオークション・啓発・教育まで幅広く扱うプロジェクトを行う。
本展示では、ニュージーランド文化や自然からインスピレーションを受けた作品や哲学者アリストテレスのセルフ・ラブからインスピーションを受けた作品が含まれた。全てにおいて根源的に自然と人間 は同一である、という認識を意識して作成された作品たちは、同時に東京という彼女の出身文化と相反する環境を解釈しながら楽しみながらも、時に反発する心模様を直感的に色やシンボルを用いて表現したものとなった。会期中には、ライブペインティングも実施。キャンバスいっぱいに描いていく姿は、とてもエネルギーに溢れると同時に、その繊細さは、鑑賞者を彼女の世界観に引き込んでいく。
ロビン・ラステンベリエルは、東京を拠点とするサウンドスケープ・プロデューサー、シンガーソングライターだ。彼の作る音は彼自身の環境の自然音が音源である。また、エレクトロニカ、サウンドセラピー、民族音楽、クラシック音楽などさまざまなの音楽をインスピレーションに、ファッション映画、ランウェイ、コマーシャル、展覧会、アートインスタレーションなどのプロデュースやパフォーマンスなど音を用いたマルチな表現活動を行っているアーティストだ。
本展では、サウンドワーク「Principle 4」をこのために制作。サウンドは総勢7名のアーティストの集まる空間を作ることをベースに、自身が身を置く環境の自然音を音楽を通して表現。また、本展ではライブパフォーマンスを実施し、多様なバックグラウンドを持つ人が作家の声に耳を傾けた。