Hauser & Wirth Menorcaは、歴史あるレイ島で現代アートと自然が調和する文化のオアシスのような場所だ。コマーシャルギャラリーとなると想像するのは真っ白なホワイトキューブの空間の中に整然と作品が並んでいる光景ではないだろうか。しかし、スペイン・メノルカ島にあるこのギャラリーは作品を展示、販売するギャラリースペースという枠組みにとどまらない、ギャラリーの新たな形を見せてくれる。
歴史との対話
メノルカ島で一番大きな街マホンの港からフェリーで揺られること15分ほど、ギャラリーのあるレイ島が近づくと18世紀の軍事病院を修復した建物が出迎えてくれる。
18世紀にイギリス海軍により建設されたこの軍事病院は、何世紀もの間島の重要な医療機関として機能していたが、島の軍事的重要性が薄れていった20世紀より病院は荒廃してしまった。
しかし、2005年にこの場所の歴史的、文化的価値を伝えていくため地元の人々により基金が設立され、彼らの努力により病院は修復され島の遺産を保存する博物館へと生まれ変わることとなった。そして、2021年、島の歴史・自然遺産と調和する形でアートを通した文化拠点とするというビジョンのもとHauser & Wirthが進出し現在に至る。
そんなビジョンを体現したように、ギャラリー空間と島内の修復された建物はお互いを圧迫せず、ちょうど良い距離感で配置されており、元々そこにあったかのような雰囲気だ。Hauser & Wirth のこの取り組みは、ただ単に新しく建物を建てるのではなく、島の歴史を汲み取る形で建物を修復している。歴史を感じる建物の中に現代アートの新たな風が吹き込むこの島では、通常のギャラリーとは違った時代を超えた対話が楽しめる。
ギャラリースペースで開催されていたRoni Hornの展示風景。
展示空間にはいくつも窓と外に出ることができるドアがあり、自然を身近に感じながら作品を鑑賞することができる。ギャラリーに差し込む陽の光や、窓から望む海の景色など、この場所ならではの風景も楽しむことができるのが特徴だ。
自然との調和
オリーブの木立の中を歩き島を周ると、自然とアートがシームレスに調和しているのが感じられる。著名な造園家であるピート・アウドルフによりデザインされた島の庭園では、島にもともと生えていた植物が生かれている。島に植えられている植物は、どれも自然に手入れされ島の景観の一部として溶け込んでおり、島をただ歩くのも一つの楽しみだ。花や木々は、建物や景観を損ねることなく自然に植えられており細部まで手が行き届いているのを感じる。
歴史や自然など島の持つエッセンスを取り入れることで、いわゆる”ギャラリー”の枠組みを超えた楽しみ方ができるのが魅力だ。
その証拠に、このギャラリーを訪れるのはギャラリーに普段から足繁く通うようなart loverだけでなく、島でゆっくりと時間を過ごすために訪れる人々も多い印象だ。島内には、素敵なレストランやハンモックでくつろげるスペースなどがあり、アートだけでなく人々が思い思いに豊かな時間を過ごす場となっている。