現代美術において、展示空間は単に作品を展示する場ではなく、作品と鑑賞者の間に生まれる対話を生み出す重要な場所です。特に、「ホワイトキューブ」と「パブリックスペース」は、その対照的な特徴から、作品の鑑賞体験や意味合いに大きな違いをもたらします。前者は、作品を純粋に鑑賞するための無機質でシンプルな空間であり、後者は、歴史や文化の香りが残る空間で作品との相互作用が生まれます。展示空間は、作品が鑑賞者に与える体験、作品自体の解釈、その場の歴史や文化との関わりなど幅広い影響を持つと言えます。
現代美術といえば、真っ白で無機質なホワイトキューブをイメージする方も多いかもしれません。展示空間として、スタンダートとなっているホワイトキューブは、20世紀初頭の近代美術の発展と密接に関連しています。1920年代に近代美術館の展示空間として登場し、特に1936年のニューヨーク近代美術館(MoMA)での「キュビスムと抽象芸術」展において、初代館長アルフレッド・バー・ジュニアによってその概念は具体化されました。この展覧会では、作品自体を際立たせるため、白く塗られた壁に均一な照明を施し、作品以外を排除する形の空間が作られました。
これにより、作品はそれぞれの背景から切り離され、普遍的な価値を持つものとして示されるようになり、ホワイトキューブは近代美術を展示する上でのスタンダードとして定着しました。鑑賞者の意識をそらす要素を無くすことで純粋な作品鑑賞体験を促し、色や素材などを際立たせ、作品の意図を伝えやすくするとされました。また、本来あらゆる場が持つ文化や歴史から自由に、より中立的な空間として、作品に普遍的な価値を与え、鑑賞者が解釈に集中できる場所となりました。その無機質で真っ白な空間は、俗世から離れた聖域のような印象すら感じさせます。

寺院や歴史的建造物などのパブリックスペースは、それぞれの場所が歴史や文化的な文脈を持ち、それらを通して展示に多様な雰囲気を与えます。これらの空間では、作品は空間の特性を引き立てたり、その対比によって新たな意味を生み出し、空間の持つ歴史や物語が作品の解釈に深みを与えることで、鑑賞者により深い体験をもたらします。また、空間自体がさまざまな質感、光の入り方を持つため、鑑賞者は移りゆく環境の中で作品を体験し、作品の新たな表情を引き出すとも言えます。
私たちは長い歴史の中で作品と向き合う中で、さまざまな場所で作品と向き合ってきました。最初は、それは生活の中の延長線上にあるもので、さまざまな形で私たちの生活の中に現れてきました。ホワイトキューブの誕生により、作品の純粋な探求が重視され、作品を私たちの生活から一度離して鑑賞するという態度が生まれ、それは特に現代美術において大きな影響をその後に及ぼしたと言えます。今回のVol.1では、ホワイトキューブとパブリックスペースが現代美術においてどのような役割を果たしているのか、その歴史と現在を紐解きました。Vol.2では、アーティスト國本怜さんとの対談を通して、展示空間と作品の関係から國本さんの作品についてお話しを伺います